【NBA本紹介】NBAバスケ超分析(佐々木クリス)
始めに
この本を手に取ったきっかけは、NBAを楽しむうえで一度読んでおいて損はないと思ったからだ。結論としては、読んでおけば現代NBAの常識を知ることができ、よりNBA観戦が楽しくなるのは間違いない。興味が出た方は下からぜひ購入してみてほしい!
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スタッツの用語について
※記事に出てくるスタッツの詳細説明はこちらを参照。
どんな本か
「現代NBAの50の新常識」と銘打って、それぞれの章でOF・DF・選手・戦術についての常識を紹介している本です。データを基にした納得の解説と豊富な図解で分かりやすく説明しているので、NBA初心者でも読みやすくなっています。
第一章:攻撃の高速化と3ポイントの躍進が開いた新時代の扉
この章では主に現代NBAのOF面での変化が書かれている。2012年ごろから3Pとペースの増加が見られ、結果的にORtgが大幅に増加しているといった内容だ。
NBAにおいて、分かりやすく勝利と相関があるスタッツはeFG%である。eFG%をあげるために現代では1回のシュートで3点稼げる3Pシュートの重要性が高まっている。3Pの確率を上げるために、3対2のような人数有利の状態で8秒以内にシュートを放つ(アーリーオフェンス)が増えていることがデータとともに記載されていた。
210cmを超えるCの選手たちも3Pを放つのが当たり前になるまで、どのような意図と歴史があったのかを知ることができた。特に、3Pの増加でDFが外に広がった影響でスペースができ、副次的にペイント内のFG%が上がったのは面白い点だ。
また、110PTSが勝利のラインという内容には以前から自分も思っていたのでとても同意できた。プレーオフではDFの強度があがることで基準が100PTSくらいになると思っているのだが、これについてどう思うか聞いてみたいところではある。
他には、ポストプレイの減少・OREBの重要性の低下・シュートフォームの変化・3Pのロングレンジ化などにも言及されているので気になる人はチェックしてほしい。
第二章:変わるディフェンスの仕組み。深まるNBAの攻防
この章では主に現代NBAのDF面での変化が書かれている。現代NBAではPnRからOFが始まることが多く、PnRへのDFの流行り廃りが主な内容だった。
PnRへのDFとして、ファイトオーバー・スイッチ・ハードショー・アイス・ロック&チェイスなどが例として挙げられていた。特にファイトオーバーとハードショーが減少傾向にある理由については面白い内容だった。
この章を読んで感じたのは、ロスターにあったDFプランを選択することと複数のDFプランを持つことが大事ということだ。
選手にはそれぞれ得手不得手がある。重量級Cがスターターのチームにオールスイッチやハードショーは適していないだろう。MILがHCをキッドからブーデンホルツァーに変えて、主要選手の入れ替えがないにも関わらずDRtgが大きく改善したように、DFプランの選択はコーチ陣の手腕が試される部分だ。
また、試合の大部分はDFプランが同じでも問題ないと思うが、試合終盤の大事な場面などにこれまでと違うDFプランを実行できるように準備しておくことも必要だろう。基本はドロップをしておいて、急にハードショーをすることでそのプレーで相手のミスを狙えるとともに、その後のプレーで相手のOFを悩ませることができる。相手がDFを攻略してきたときにさらに対応できるように準備がいるだろう。
実際のところ、PnRを2人だけで完璧に守るのは難しいので周りの選手のヘルプも必要になってくる。章の最後で取り上げられていた、ネクストディフェンスのようなローテーションを意識したチーム全員でのDFが高レベルで実行できるチームが、これからのNBAで優勝を目指せるチームになってくると個人的には感じた。
他には、ロードアップ・ボックスワンを含めたゾーンディフェンス・クローズアウトの変化・ショットクロックとeFG%の関係性などにも言及されているので気になる人はチェックしてほしい。
第三章:バスケスタイルの進化によって覆されるプレーヤー像
この章では主に現代NBAの選手に求められることの変化が書かれている。これまでポジションといえばPG・SG・SF・PF・Cの5つの区分が中心だったが、現代ではOFでの役割からボールハンドラー・ウィング・ビッグマンといった分類が進んでおり、それぞれの特徴や求められるスタイルが書かれている。
PnRからOFのかじ取りを担うボールハンドラーはチームに複数人いることが望ましい、スペースやDFにおいて貢献が大きいオールラウンダーなウィングがいると優勝に近づく、ビッグマンにもシュート力や走力が求められており順応してきている、といった内容から、チーム作りの難しさというものを感じた。
ハンドラーもできて、長いウィングスパンでDFでも貢献できて、サイズもあるという何でもできる選手が何人もいれば簡単だが、そういった大エースタイプは特に希少である。そこで、少しでもバランスのいい選手を欲しがる傾向が強まって、1つの能力に特化している選手より、弱点の少ないオールラウンダー寄りの選手が増えてきているのだろう。
DENのGMが、「選手選びには4つの基準があり、3つ以上を満たす選手だけをロスターに加えている。また、弱点が被るような選手は選ばない。」と語っている記事を見かけた。優勝を果たしたDENのGMの言葉には説得力があり、他のチームが真似て弱点の少ない選手選びをすることが増えそうだ。
他には、ウィングスパンの重要性・3&Dとは・ドラフト選手の低年齢化・インターナショナル選手の増加の理由などにも言及されているので気になる人はチェックしてほしい。
第四章:革新的タクティクス。駆け引きと戦術の最前線
この章では主に現代NBAの戦術の変化が書かれている。筆者に「現代のNBAの攻防を見ることは、PnRを見ることに近い」と言わしめるほど、PnRを見ない試合はない。PnRのみならずスクリーンを用いた戦術を紹介している。
スクリーンが現代NBAで多用されるのは、得点効率が高い人数有利の状況を最も効率的に生み出せるからだ。そのため、スクリーンを用いたいろいろな戦術が生まれ、それに対抗するDFプランが生まれ、また、対抗するスクリーンプレーが生まれてきた。
これからのNBA選手には、身長やウィングスパン・ジャンプ力といった身体的能力だけでなく、OF・DFどちらでも個々の状況に応じて最適なプレーを選択するバスケットボールIQが必要だと感じた。例えばDFでは、自分のマークマンを守るだけでは不十分で、時には自分のマークマンを離してペイントエリアにヘルプに行くことが必要になる。
一度たりとも同じ状況が発生しないほど戦略が複雑な現代NBAで、状況を見極めて適切なプレーを選択するのは、もしかすると身体能力以上に求められる能力かもしれない。
他には、ドラッグスクリーン・ピストルアクション・ワイドダウンスクリーン・スペインピック・トライアングルオフェンスの衰退・スプリットアクション・マッカビオフェンス・ゴーストスクリーンなどにも言及されているので気になる人はチェックしてほしい。
最後に
データはすべてを表さないがNBAを楽しむ1つの指標にはなると思っている。データを妄信するのは良くないが、データを基にNBAを楽しめるコンテンツを提供していきたいと思った。
改めて、今回紹介した本に興味を持った方は下のリンクから購入してみてください!
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